はじめに(1)
社会福祉基礎構造改革とは何か? -介護保険制度と障害者自立支援法を軸に-(3)
不登校理解=原因論の変説に関する一考察 -小泉英二に照準して-(27)
暮らしの中の医療化に対する両義的な思い -石川憲彦さんの発題に触発されて-(34)
「安楽死・尊厳死」論の状況的文脈(39)
〈アメリカの優生運動研究ノート(IV)〉統計に見る優生不妊手術の歴史と問題(51)
「いのち」の近代史を振り返る -ハンセン病・結核問題を軸に-(88)
まか不思議な世界(その2)(120)
善悪の彼岸へ -『スティーヴィー』からの誘い-(125)
『自閉症裁判-レッサーパンダ帽男の罪と罰』で考える(127)
補説-第二の内面化・言語・身体(135)
日本社会臨床学会第14回総会のご案内表紙裏
編集後記140
本誌13巻3号をお届けする。
「〈'05秋の合宿学習会〉 社会福祉基礎構造改革とは何か? ─介護保険制度と障害者自立支援法を軸に─」では、飯島勤と古賀典夫が発題して、討論が続いたが、まずは、その報告を載せた。左頁(表紙裏)を見て頂くとお分かりのように、この学習会は、第14回総会のシンポジウム「進行する『福祉』の改編を問う」へと連動するが、そこで問いが更に深化しひろがることを期待している。梶原公子は、「〈'04学習会〉『暮しの中の医療化』を考える」における石川憲彦の発題に触発されて、「暮しの中の医療化」に対する両義的な思いを論じている。12巻3号で、尊厳死の倫理化・合法化の動きに呼応して、古賀典夫と篠原睦治が、そのことに関する批判的問題提起をしているが、今号では、八木晃介が「『安楽死・尊厳死』論の状況的文脈」を論じている。以上のことは、「暮しの中の福祉化・医療化」問題とでも括られると思うが、本誌は、これからもそのことを考え続けていきたいので、読者の皆様の参加を望んでいる。また、山岸竜治は、'90年前後を境にして、「不登校」の原因論が、子どもの問題とすることから学校教育・教師のそれとすることへと変説していることに着目して論じている。これからも「不登校」そのものをどのように考えるかなどを探っていきたい。
さて、本誌では、折々に、らい予防法の下での「ハンセン病の強制隔離」問題を考えてきたが、今号では、篠原睦治が藤野豊と青木純一を招いて、ハンセン病・結核問題を軸に、「『いのち』の近代史を振り返る」討論をしている。また、今回、秋葉聰は、「アメリカの優生運動研究ノート(Ⅳ)」として「統計に見る優生不妊手術の歴史と問題」を論じている。ふたつは、「近代化と優生思想・政策」ということに関わっているが、今日の「暮らしの中の福祉化・医療化」へとつながる側面とつながらない側面がある。そんな事々が浮き彫りになればと願っている。
赤松晶子は、〈ここの場所から〉欄で、精神医療の現場で進行する、医師、看護士などとのせめぎ合いの中で、患者側に立とうとする一心理臨床家の模索を語り始めているが、今回が二回目である。赤松には、この連載を希望しているが、読者の皆さんにも、各自の臨床現場をリアルに語る、そんなエッセイをお届けくださればと思っている。
〈映画や本で考える〉には、三本の文章を載せた。佐藤剛は、佐藤が惹かれ、多くの人たちに観てほしい映画『スティーヴィー』を、この映画からの誘いとして愛情を込めて書いている。四十物和雄は、『自閉症裁判』を論じているが、社会的文脈と個人的特徴のはざまで「自閉症」を理解しようとする真摯な営為になっている。原田牧雄は、前号で、『心を商品化する社会』を読んでいるが、今回は、その補充である。ここでは、改めて、意識、身体、感情の統合性が疎外されていく社会の中で、「心(ひととひとの関係)」が商品化されていく過程を論じている。
さて、一部は前号でお伝えしてあるが、編集方針に関わって、読者の皆さんのご理解とご協力を得たいことがある。従来の〈映画と本で考える〉欄は、〈映画や本で考える〉とした。映画と本だけでなく、いろいろなメディアを介して、見たり、聞いたり、考えたりしたことをご紹介くださればとの願いをより強く込めた名称に変えた。言うまでもなく〈ここの場所から〉欄も継続する。臨床現場など、職場のことに限らない。暮しのいろいろな場面を〈ここの場所〉として、そこからの報告をしてくださればと願っている。
掲載した論文、エッセイ、報告などの著者には、とりあえず当該掲載誌5冊をお届けしてきたし、今後も、そのようにさせていただくが、より多くの冊数を希望する場合は、可能な限り、ご要望にそいたいと思います。また、抜き刷りを希望する場合、宅急便代込みの実費(13巻2号の175頁参照)でお届けします。いずれの場合も、学会事務局にお申し出ください。
頁をめくってくださると気づかれると思いますが、今号より、本文中の引用文献や注釈などを、当該頁の下欄に入れていくことにしました。注釈などが長いと、下欄のスペースが大きくなったり、次の頁までに及ぶことがあります。それでも、末尾に一覧するよりも、読みやすいのではないかと考えて、このようにしてみました。読者の皆さんのご意見、ご感想を頂くと幸いです。
14巻1号は、第14回総会に先んじて、4月中にはお届けしますし、掲載予定の原稿も揃いつつあります。14巻2号については、この総会記録が載ることが決まっているぐらいで、まだまだ余裕があります。どうぞ、七月末をめどに、ふるって、投稿してくださるように、心からお願いします(裏表紙裏参照)。
それでは、次回総会開催地、沖縄で、読者の皆さんとお会いできることを祈願して、筆を置きます。(2006/02/13)